公証人が公正証書の原本に署名する際に使用するペンの種類には、毛筆ペンやサインペンなどがあり、ボールペンを使う公証人はほとんど見かけません。それぞれのペンの使用には理由があります。

まず、毛筆ペンが選ばれる理由として、伝統的な書法と儀礼的な意味合いが挙げられます。毛筆ペンを用いることで、文書に対して高い格式と重みを付与することができ、公式な文書としての価値が一層高まります。また、毛筆ペンはインクが乾きにくいため、筆跡が鮮明で、長期間保存されても劣化しにくいという特性があります。このため、歴史的にも重要な文書や、公正証書など、長期間保存されるべき書類には適していると言えます。

次に、サインペンが選ばれる理由としては、使用の手軽さと安定性が挙げられます。サインペンはインクが乾くのが早く、筆跡が鮮明で一貫性があります。公式な文書においても、読みやすく整った署名が求められるため、サインペンは実用的な選択肢となります。また、サインペンは一般的にインクの耐久性も考慮されており、長期間保存される文書にも適しています。

一方で、ボールペンはその特性から公証人の署名にはあまり使用されません。ボールペンのインクは時間が経つと退色する可能性があり、また、筆跡が不均一になることがあります。そのため、長期間の保存や公式な文書には向いていないとされ、一般的には毛筆ペンやサインペンが好まれるのです。

このように、公証人が使用するペンの選択は、文書の保存性や格式を重視し、それぞれのペンの特性に応じた適切な選択がなされているのです。