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実際にご依頼を受けたこととして、親子二人で暮らしている方々が親御様を亡くされた後、ご自身の将来について考え始めるケースが多く見受けられます。親を亡くす経験は心に大きな影響を与え、今後の人生や自分の最期について向き合うきっかけとなることが多いのです。そのため、遺言書作成の相談をいただくことも増えています。

しかし、こうした相談の中で気づいたのは、親御様を亡くされた後に遺言書を作成される方が大半であるということです。もちろん、そのタイミングで遺言書を準備することは重要ですが、さらに重要なのは、お子様が先に亡くなる可能性を考慮して遺言書を早めに準備することです。多くの方が親を見送ることを前提にしていますが、実際にはお子様が先に亡くなることも十分に起こり得るのです。

特に、近年では高齢化社会の影響もあり、親子で共に高齢になっている場合、お子様が親よりも先に健康問題や事故で亡くなる可能性が増加しています。そのような不測の事態に備えて、早めに遺言書を作成することが、ご家族や親しい人たちに対して無用な混乱や争いを避ける最善策であると考えられます。

親御様を亡くされた方の中には、ご自身の財産をどのように引き継ぐかや、自分が亡くなった後のことについては、「まだ時間がある」と思いがちです。しかし、先に何が起こるかわからないという現実を前提に、先延ばしせずに早めに準備をしておくことが、結果的に自分自身も、そして家族も安心できる選択肢となります。具体的には、遺産分割方法や相続人を明確にしたり、葬儀の希望や終末医療についての意向を遺言書に記載しておくことで、親しい人々に残される負担を軽減できます。

遺言書作成は、単に財産を分けるための手続きではなく、自分が最期までどのように生きたいのか、そして最期に周囲の人々にどう向き合いたいのかを考えるプロセスでもあります。親が先に亡くなり、自分も遺言書を作ろうと考えたそのタイミングで、ぜひご自身の状況や家族の未来について深く考えていただきたいのです。

特に、独身の方やお子様がいない方、もしくは長期間疎遠になっている家族がいる方は、万が一の際に誰が自分の意思を代弁するのかを明確にしておく必要があります。また、お子様がいらっしゃる場合でも、先にお子様が亡くなる可能性を考慮して遺言書を作成しておけば、残された親族や友人に対する配慮を示すことができ、スムーズな相続手続きを進めることが可能です。

これらのことから、親が亡くなった後に初めて遺言書作成を考えるのではなく、将来の不確定要素を見据えて、早めに遺言書を準備することが、安心して人生を送るための大切な一歩となることを、強くお勧めします。