遺言執行者と死後事務受任者は、どちらも亡くなった方の遺志や手続きを代行する役割を担いますが、それぞれ異なる特徴があります。以下に、両者の違いを5つ挙げて説明します。
1.役割と目的
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために選ばれる人物です。
例えば、遺産の分割や相続人への財産移転など、遺言に記された具体的な指示を実行します。
一方、死後事務受任者は、遺言がない場合や、遺言に記されていない事務的な手続き(葬儀の手配や役所への届け出など)を行うために契約される人です。
死後事務の対象範囲は遺言の内容に縛られず、日常的な手続きが中心です。
2.法律上の権限と義務
遺言執行者は民法で定められた役割であり、法律に基づいて遺言の内容を忠実に実行する義務があります。
遺言の内容を変更する権限はなく、指定された事項のみを実行します。
これに対して、死後事務受任者は民法ではなく、委任契約に基づいて活動します。
依頼者が契約時に指定した範囲内で業務を行うため、柔軟な対応が可能です。
3.選任の方法
遺言執行者は、遺言書の中で故人自身が指名することが一般的です。
遺言に記載がない場合は、相続人や裁判所が選任することもあります。
これに対し、死後事務受任者は生前に本人と契約を交わして選任されます。
契約内容は依頼者の要望に応じて決定されるため、依頼者の意思を反映した手続きが可能です。
4.業務の終了時期
遺言執行者の業務は、遺言の内容がすべて実行され、相続が完了した時点で終了します。
例えば、不動産の名義変更や遺産分割が完了した後です。
一方、死後事務受任者の業務は、契約で定められた業務がすべて完了した時点で終了します。
死後の役所への届け出や銀行口座の解約など、日常的な事務処理が完了するまで対応します。
5.費用の負担方法
遺言執行者への報酬は、遺言書で定められている場合がありますが、特に定めがない場合は相続人の合意で決まります。
業務の複雑さや相続財産の規模によって報酬額が変わることもあります。
死後事務受任者の場合は、生前に依頼者と契約時に報酬が決定されるため、費用の透明性が高いです。
契約内容によっては、依頼者が生前に前払いすることもあります。
これらの違いから、遺言執行者は遺言内容の実現に特化した役割を持つ一方、死後事務受任者は日常的な事務手続きを柔軟にサポートする役割を担っています。
どちらを選ぶべきかは、依頼者が亡くなった後にどのようなサポートを希望するかによります。
生前の準備をしっかりと行い、適切な役割を選ぶことで、遺族の負担を軽減することができます。